小さな会社のオフィスの選び方|自宅・バーチャル・レンタル・賃貸を比較

小さな会社のオフィスを考えるとき、最初から「どの物件を借りるか」を決める必要はありません。ひとり法人や数名規模の会社では、会社の住所、普段働く場所、取引先や応募者を迎える場所を、必ずしも一つのオフィスにまとめる必要がないからです。たとえば、普段は自宅で仕事をしながら会社の住所にはバーチャルオフィスを使い、対面の打ち合わせが必要なときだけ貸会議室を利用する方法もあります。一方、社員が日常的に出社する会社や来客・面接・機密情報の取扱いが多い会社では、レンタルオフィスや専用の賃貸オフィスを持つ合理性が高くなることがあります。

この記事では、自宅・バーチャルオフィス・レンタルオフィス・賃貸オフィスの4つを、小さな会社の経営側から比較します。

この記事の結論
  • オフィスは「会社の住所」「働く場所」「人を迎える場所」に分けて考える
  • 1人・来客なし・住所公開に問題がなければ、自宅から始める余地がある
  • 自宅で働けるが会社住所を分けたいなら、バーチャルオフィスを組み合わせられる
  • 物理的な執務場所が必要なら、レンタルオフィスや賃貸オフィスまで比較する
  • 月額料金だけでなく、契約の柔軟性と将来人数まで含めて決める

一番立派なオフィスではなく、今の会社に必要な機能を満たしながら、不要な固定費を持ちすぎない形を選ぶことが基本です。

目次

小さな会社のオフィスは「住所・働く場所・人を迎える場所」に分けて考える

オフィス選びを難しくしている理由の一つは、「オフィス」という言葉に複数の役割が含まれていることです。小さな会社では、まず次の3つに分解して考えると整理しやすくなります。

機能考えること主な選択肢
会社の住所本店所在地や対外的な住所をどこに置くか自宅、バーチャルオフィス、レンタルオフィス、賃貸オフィス
働く場所代表者や社員が日常的にどこで仕事をするか自宅、レンタルオフィス、シェアオフィス、賃貸オフィス
人を迎える場所商談、採用面接、来客をどこで行うか自社オフィス、貸会議室、共用会議室など

この3つを一つの場所で満たす必要がある会社もあれば、分けた方が合理的な会社もあります。特にバーチャルオフィスは一般的な賃貸オフィスとは役割が異なり、中小企業基盤整備機構のJ-Net21でも、実際の事務所を持たずに住所・電話番号・郵便などを利用する形態として整理されています。

中小企業基盤整備機構 J-Net21「事務所の形態」

つまり、本店所在地=バーチャルオフィス、執務場所=自宅という組み合わせも成立します。「自宅かバーチャルオフィスか」という二択ではなく、必要な機能を分けて考えるのがこのサイトの基本です。

まず結論|会社の状況から4つの選択肢を絞る

会社の状況最初に検討しやすい形
1人中心・来客が少なく、自宅住所の利用にも問題がない自宅
普段は自宅等で働けるが、会社住所として自宅を使いたくない自宅等+バーチャルオフィス
1人~数人で使う物理的な仕事場所が必要で、設備を一から整える負担は抑えたいレンタルオフィスなど
専用スペース、来客対応、設備、レイアウトを自社の都合に合わせたい賃貸オフィスを含めて検討

これは一律の正解を示す表ではありません。業種、許認可、物件の契約条件、社員数、来客頻度、郵便物の量、情報管理などによって適した形は変わります。

自宅・バーチャル・レンタル・賃貸オフィスを比較

比較項目自宅バーチャルオフィスレンタルオフィス賃貸オフィス
会社住所自宅を使用住所利用が中心契約内容による契約物件を使用
日常の執務場所あり原則として別に必要ありあり
専用スペース自宅内原則なし個室型などあり専有
初期費用抑えやすい抑えやすい傾向一般賃貸より抑えやすい場合がある比較的大きくなりやすい
継続固定費抑えやすい比較的小さい傾向プラン・人数等による賃料・共益費等が継続
会議・来客自宅環境による会議室等はサービスによる共用会議室等がある場合が多い自社で整備
レイアウト自由度住宅条件による対象外制限されやすい契約範囲で高め
移転・縮小への対応比較的柔軟契約条件による比較的柔軟な商品もある解約・原状回復等の確認が重要

レンタルオフィスについてJ-Net21は、内装や机・椅子などが整っているものがあり、一般的な賃貸オフィスと比べて初期の設備整備にかかる費用や手間を抑えられる点を紹介しています。東京都企業立地相談センターも、月々の賃料だけでなく、初期費用、面積、利用時間、法人登記の可否、設備などを確認する必要があると整理しています。

東京都企業立地相談センター「起業したらオフィスはどうする?オフィスの選び方や種類を解説」

自宅が合いやすい会社

自宅は、仕事を始めるために新しい物理スペースを借りなくてよいため、固定費を抑えやすい選択肢です。代表者1人を中心に事業を行い、PC等があれば仕事ができ、来客・在庫・大型設備が少ない会社では検討しやすくなります。

一方で、賃貸住宅なら賃貸借契約、分譲マンションなら管理規約などの確認が必要です。また、自宅を会社の本店所在地にすれば、会社の本店所在地として公開される点も踏まえて判断します。詳しくは自宅で法人登記するメリット・デメリットで整理しています。

バーチャルオフィスが合いやすい会社

バーチャルオフィスは、物理的な仕事場所そのものより、会社の住所や郵便などの機能を確保したい会社と相性のよい選択肢です。普段の仕事は自宅や顧客先で完結し、自宅とは別の会社住所を持ちたい場合に検討しやすくなります。ただし、サービスごとに法人登記、郵便物の取扱い、転送頻度、会議室、契約期間などが異なります。自宅とどちらが合うかを会社住所の観点から比べたい場合は自宅住所とバーチャルオフィスの比較が判断材料になります。

レンタルオフィスが合いやすい会社

レンタルオフィスは、実際に仕事をする場所は必要だが、一般的な賃貸オフィスを一から整備するほどではない会社にとって有力です。家具や通信環境が用意されている施設なら、立ち上げ時の手間を抑えやすくなります。自宅以外に日常的な仕事場所が必要、1人~数人から使い始めたい、来客や打ち合わせの場所も欲しいといった場合に検討しやすいでしょう。利用時間、会議室、郵便、来客、個室の仕様などは施設・プランごとに確認します。

賃貸オフィスが合いやすい会社

一般的な賃貸オフィスは、自社専用の執務空間を確保し、必要な設備やレイアウトを整えたい場合に検討します。社員が継続的に出社する、複数名が同時に働く、来客や会議が多い、機器・書類等を一定量保管するといった会社では合理性が高くなります。その代わり、物件によっては保証金・敷金等の初期費用に加え、家具、内装、通信、移転、原状回復等も考える必要があります。J-Net21も、事務所の賃料は毎月発生する固定費になるため、起業初期には賃料を抑える工夫が重要としています。

中小企業基盤整備機構 J-Net21「事務所を借りる」

契約前に確認したい6項目

確認項目見るポイント
会社住所本店所在地として利用する場合、登記・住所利用の条件を確認
住宅・サービス契約賃貸借契約、管理規約、利用規約の制限を確認
許認可等必要な事業所要件がある業種は、所管行政庁等の最新要件を確認
郵便・来客受取方法、転送、会議室、来客対応が自社の運用に合うか
総コスト月額だけでなく初期費用、オプション、通信、家具、移転・退去費用まで見る
変更しやすさ最低利用期間、解約予告、違約金、原状回復、本店移転の可能性を確認

会社設立時に本店所在地をどこへ置くかが主な悩みなら、会社設立時の本店所在地の決め方で、公開・継続性・契約・郵便・移転コストをまとめて確認できます。

オフィス選びは固定費だけで決めない

経営企画の立場から見ると、オフィスは毎月発生する固定費の一つです。事業立ち上げ期は、オフィスに使う資金を営業、採用、広告、設備、システム、運転資金などへ回すこともできます。だからといって、固定費を削ることだけを目的にすると、来客場所、情報管理、社員の仕事場所など必要な機能まで不足することがあります。家賃の安さではなく、会社を運営するために必要な機能を満たす総コストで考える方が実態に合います。

社員を採用する予定があるなら「今の人数」だけで決めない

ひとり法人の段階では自宅やバーチャルオフィスで十分でも、社員を採用すると必要な環境が変わることがあります。現在の社員数だけでなく、採用予定人数、出社頻度、面接方法、入社後の教育、会議、機密情報の管理などを確認しておくと、次にどのオフィスへ移るかを考えやすくなります。

採用前に見ておきたいこと
  • 今後どの程度採用する可能性があるか
  • 毎日出社か、週数回か、原則リモートか
  • 対面面接・研修・会議の場所が必要か
  • 社員の通勤や保管スペースをどの程度考慮するか

最初から完成形のオフィスを選ばなくてもよい

小さな会社では、事業の成長に合わせてオフィスを変える考え方もあります。代表者中心でオンライン完結の時期は自宅や自宅+バーチャルオフィス、数名で働く場所が必要になればレンタルオフィス、出社人数・来客・設備要求が高まれば賃貸オフィスというように、段階的に見直せます。重要なのは、今の会社に必要な機能を満たしつつ、次の選択肢へ移りやすい状態を作ることです。小さな会社ほど、選び直しやすさもオフィスの価値の一部として考えるとよいでしょう。

5ステップで決める|小さな会社のオフィス選び

迷ったときは、次の順番で条件を絞ります。

STEP
会社の住所と働く場所を同じにする必要があるか

分けられるなら、自宅で働きながら本店所在地だけを別住所にする方法もあります。

STEP
毎日使う物理的な仕事場所が必要か

不要なら自宅・バーチャルオフィスを中心に、必要ならレンタル・賃貸オフィスまで広げます。

STEP
専用スペースや設備をどこまで必要とするか

家具付きの小規模個室で足りるのか、自社専用のレイアウト・設備・保管場所まで必要かを確認します。

STEP
今後の人数と来客を考える

採用予定、出社頻度、面接、会議、来客などを見て、今後必要になる機能を確認します。

STEP
契約・登記・許認可等を確認する

最後に、候補となる物件・サービスの契約条件、法人登記の利用可否、必要な許認可等を確認します。

よくある質問

小さな会社でも最初から賃貸オフィスを借りた方がよいですか?

一律には言えません。専用スペース、社員の出社、来客、設備などが必要なら合理性がありますが、不要な機能まで持つと固定費が増えます。まず必要機能を整理してから判断します。

会社の住所と実際に働く場所は同じでなくてもよいですか?

必ずしも同じとは限りません。たとえば本店所在地にバーチャルオフィスを使い、日常業務は自宅で行う構成もあります。契約条件や許認可等は別に確認してください。

一番安いオフィスを選べばよいですか?

月額だけでなく、初期費用、郵便、会議室、通信、移転、解約、原状回復など必要機能を満たす総コストで比較した方が実態に合います。

社員を採用する予定がある場合、今から大きいオフィスを借りるべきですか?

将来人数だけで大きな固定費を先に持つ必要はありません。採用予定、出社頻度、契約の柔軟性を見ながら、会社の成長に合わせて移行しやすい形を選ぶ考え方があります。

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オフィスの形を決めた後は、会社住所の決め方や自宅登記の条件を確認すると、設立時の判断を具体化できます。

この記事で確認した主な一次資料

制度・登記・契約条件等は変更される場合があります。実際に会社設立、登記、物件・サービスの契約等を行う際は、公的機関および各サービス提供事業者の最新情報をご確認ください。

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